天の川銀河
MILKY WAY GALAXY
- 距離
- 0(故郷)
- 直径
- 約10〜18万光年
- 恒星数
- 2,000〜4,000億個
私たちのホーム銀河。中心には質量430万太陽の超大質量ブラックホール「いて座A*」が鎮座する。太陽は銀河中心から約2万6,000光年、オリオン腕に位置する。
LOCAL GROUP OBSERVATORY · 局部銀河群観測所
THE LOCAL GROUP — OUR GALAXY CLUSTER
直径1,000万光年。総質量は太陽の1兆2,900億倍。天の川銀河、アンドロメダ銀河、さんかく座銀河、そして無数の矮小銀河たちが、互いの重力で結びついた「宇宙の故郷」。ここは、私たちが所属する銀河団の全記録である。
局部銀河群(The Local Group)は、天の川銀河が属する銀河群である。直径およそ1,000万光年(約3メガパーセク)のほぼ球形の領域に、80個以上の銀河が互いの重力で縛られている。「局部」とは、文字どおり「ここら一帯」という意味だ。これは、私たちの宇宙における住所そのものである。
総質量は「タイミング論法」と呼ばれる力学的手法により、太陽質量の約1兆2,900億倍(±2,400億)と推定されている。しかし、星やガスとして見える普通の物質は、そのわずか数パーセントにすぎない。質量の大部分を占めるのは、光を一切放たないダークマター(暗黒物質)だ。局部銀河群は本質的に「暗黒物質の塊」であり、星々はそこにわずかに灯った光にすぎない。
群の重力は、二つの巨大渦巻銀河——天の川銀河とアンドロメダ銀河(M31)——が支配し、第三位にさんかく座銀河(M33)が続く。残りの成員はすべて、かすかな矮小銀河たちだ。すばる望遠鏡やヴェラ・ルービン天文台などの広視野探査により、新しい成員は今も毎年名簿に加わり続けている。
80余の成員から、特徴的な12銀河を厳選。タイプで絞り込めるほか、「3Dフォーカス」を押すと背景の星図上でその銀河の位置へカメラが飛行する。
MILKY WAY GALAXY
私たちのホーム銀河。中心には質量430万太陽の超大質量ブラックホール「いて座A*」が鎮座する。太陽は銀河中心から約2万6,000光年、オリオン腕に位置する。
M31 / ANDROMEDA
群最大の渦巻銀河。恒星の数では天の川を上回る。毎秒約110kmで私たちに接近しており、約45億年後には衝突・合体することが確定している。
M33 / TRIANGULUM
群第三位の渦巻銀河。アンドロメダの衛星である可能性が指摘されている。暗い夜空では肉眼でもかすかに見え、肉眼で見える最遠天体の候補の一つ。
LMC / LARGE MAGELLANIC CLOUD
天の川最大の伴銀河。内部の「タランチュラ星雲」は局部銀河群で最も活発な星形成領域であり、1987年には超新星SN 1987Aが出現した。
SMC / SMALL MAGELLANIC CLOUD
大マゼラン雲と対をなす伴銀河。二つの雲の間、そして天の川へ向かって「マゼラニック・ストリーム」と呼ばれる巨大なガスの尾が伸びている。
SAGITTARIUS dSph
1994年、銀河面の背後に隠れていたところを発見された「最寄りの隣人」。今まさに天の川の潮汐力で引き裂かれ、星のストリームとして吸収されつつある。
COMPACT ELLIPTICAL
アンドロメダ銀河のコンパクトな伴銀河。中心核が異常に高密度で、かつてM31に食い破られた銀河の「生き残った芯」ではないかと考えられている。
NGC 205
アンドロメダ銀河最大の伴銀河。メシエがカタログに追加したのは1967年と異例に遅く、M31の隣に写る小楕円として古くから知られていた。
STARBURST DWARF
局部銀河群で唯一確認されている「スターバースト銀河」。体当たり的な勢いで星を生み続けており、X線で輝くブラックホール連星も多数発見されている。
WOLF–LUNDMARK–MELOTTE
群の辺境に孤立する不規則銀河。金属量が極めて低く、初期宇宙の銀河を思わせる「生きた化石」。どの大銀河の重力にも強く縛られていない可能性がある。
BARNARD'S GALAXY
1884年にバーナードが発見した不規則銀河。ハッブルがセファイド変光星を探し「島宇宙論争」に決着をつけた舞台の一つ。HII領域が豊富に散らばる。
LEO I
天の川から最も遠い衛星銀河の一つ。比較的高速で接近しており、つい最近(宇宙スケールで)天の川の重力圏へ落ちてきた「新参者」の可能性が高い。
局部銀河群は、天の川サブグループ(天の川・大/小マゼラン雲・いて座矮小・NGC 6822など)と、アンドロメダサブグループ(M31・M32・M110・NGC 147・NGC 185、そして数十の暗い矮小銀河)という二つの「勢力圏」に分かれる。第三位のM33がどちらに属するかは、今も議論の的だ。
二大銀河は、その間にある共通重心(バリセンター)を巡って運動している。アンドロメダは毎秒約110kmで接近しており、横向きの速度成分は小さい。つまり両者は「すれ違う」のではなく、ほぼ真正面から落ち合っている。
各大銀河は、可視部分の何倍もの大きさの暗黒物質ハローに包まれている。衛星銀河の運動や潮汐ストリームの解析は、天の川とアンドロメダのハローがすでに接触し始めていることを示唆している。
群の重力が宇宙膨張に打ち勝つ限界半径(約100万パーセク)を「ゼロ速度面」と呼ぶ。内側の銀河は群に縛られ、外側の銀河はハッブルの流れに乗って遠ざかる。局部銀河群とは、膨張する宇宙の中に開いた重力の静謐な泡なのである。
局部銀河群の成員は、空のある決まった方向——つまり星座——に集まって見える。星座は天球上の「住所」であり、1,000年前の観測者から現代の天文台まで、誰もが同じ道しるべをたどってきた。左のリストから星座を選ぶと、背後の全天図がその星座へカメラを向け、星の並びをなぞって見せる。
街明かりのある空でも、双眼鏡(7×50)があればアンドロメダ銀河は淡い光斑として捉えられる。まず秋の大四辺形を見つけ、アルフェラッツ→ミラクへ視線を移す。月明かりのない夜を選び、空の高い時間帯が有利だ。
十分に暗い空では、さんかく座銀河M33が「そらし目」(視野の脇で捉える技法)で肉眼視できる。これは肉眼で見える最も遠い天体であり、あなたの網膜に届く光子は273万年前に出発したものである。
日本からはほとんど見えないが、南半球では大・小マゼラン雲が肉眼で明瞭な「雲」として見える。16〜20万光年彼方の伴銀河を、道具なしで眺められるのは南の特権だ。日本では沖縄本島以南で、LMCが地平線すれすれに昇る。
三脚に載せた標準レンズのカメラで30秒も露出すれば、M31の円盤とカシオペアのW、そして天の川の星並みが写る。画面を横切る淡い光の帯こそ、私たちが銀河の中にいることの直接の証拠である。
宇宙が誕生。インフレーションが刻んだ微小な密度ゆらぎが、やがて銀河群へと成長する「種」となる。
暗黒物質の塊がガスを引き寄せ、最初の星々と原始銀河が灯る。天の川ハローの最古の星々はこの時代の生き証人。
繰り返す併合で銀河が成長。天の川は約100億年前、ガイア・エンケラドゥスという中規模銀河を飲み込んだ(ガイア衛星が明らかにした)。
天の川の薄い円盤が着実に星を形成。アンドロメダも度重なる合体を経て、現在の壮大な渦巻構造へと育っていく。
大・小マゼラン雲が天の川の重力圏へ落下。ガスの尾(マゼラニック・ストリーム)を天の川へ向かって引きずり始める。
ハッブル宇宙望遠鏡、ガイア、すばるが群の詳細を精密測定。254万光年彼方のアンドロメダが「接近中」であることが確定する。
天の川とアンドロメダが初接近。ガス雲が衝突して星形成が爆発し、夜空に壮麗な潮汐の尾がかかる。
数回のすれ違いの末、両銀河は合体し一つの巨大楕円銀河へ。遠い未来、群の全成員もまた一つに統合されていく。
天文学で最も有名な「予言」。アンドロメダ銀河は毎秒約110kmで接近しており、2012年、ハッブル宇宙望遠鏡による固有運動の精密測定が、ほぼ正面からの衝突を確定した。
「二つの銀河が衝突するとき、星どうしは幽霊のようにすれ違う。実際にぶつかり、輝き出すのは、ガスのほうである。」— 銀河衝突シミュレーションの常識より
約45億年後の初接近では、二つの円盤が重なり、ガス雲どうしが衝突して爆発的な星形成(スターバースト)が引き起こされる。恒星どうしの間隔はあまりに広大(最寄りの恒星まで約4光年)なため、星どうしが直接ぶつかることはほぼない。しかしガスは確実にぶつかり、夜空は新たな星々の光で塗り替えられる。
数回のすれ違いを経て約60億年後、両銀河は一つの巨大楕円銀河「ミルコメダ(Milkomeda)」へ合体する。二つの超大質量ブラックホール(いて座A*:430万M☉、M31中心:約1億M☉)は連星となり、やがて合体して時空に重力波を放つ。太陽系は新銀河の外縁部へ弾き飛ばされる可能性が高い——ただしその前に、太陽は赤色巨星へと進化している。
「シミュレーション開始」を押すと、背景の3D星図上で45億年の歳月を圧縮再現します。
※ 時間は圧縮されています。シミュレーション中はカメラが自動追尾します。
局部銀河群の質量収支。私たちが「銀河」と呼んでいる光のすべては、全体の1割にも満たない。
渦巻銀河の回転曲線は外縁まで落ちず、衛星銀河は見える質量だけでは説明できない速度で運動している。局部銀河群は、暗黒物質の巨大なハローの中に、星々がわずかに散りばめられた構造なのである。
カーンとウォルティエは、天の川とアンドロメダの「距離」と「接近速度」だけから群の総質量を見積もった。見えない質量を天秤にかけた、最初の本格的な試み。その推定値は半世紀後の精密測定と驚くほど近い。
恒星わずか数千個の「超淡矮小銀河(UFD)」は、質量光度比が1000を超えることもあり、既知で最も暗黒物質に支配された天体だ。暗黒物質粒子の対消滅ガンマ線を探す間接探査の最前線となっている。
いて座矮小銀河が引き裂かれてできた星の川は、天の川ハローの重力ポテンシャルをなぞる「糸」として機能する。ガイア衛星のデータは、ハローが完全な球ではなくわずかに歪んでいることを示唆している。
ペルシャの天文学者が「小さな雲」として記録。銀河系外天体の人類最古の観測記録とされる。肉眼で見える最も遠い天体は、千年前からそこにあった。
シャルル・メシエが星雲・星団のカタログを刊行。M31・M32・M33・M110など、局部銀河群の主要成員に今日まで使われる番号が与えられる。
M31の中に突如現れた「新星」(実は超新星 S Andromedae)。もし銀河内ならありえない明るさであり、「アンドロメダは銀河なのか星雲なのか」論争が熱を帯びる。
ローウェル天文台のスライファーがM31のスペクトルを測定。毎秒約300kmという異常な速度で「接近」していることを発見。宇宙膨張の発見より17年も前のことだった。
ウィルソン山天文台の100インチ望遠鏡で、ハッブルがM31内のセファイド変光星を発見。距離を測定し、アンドロメダが天の川の「外」にあることを証明。「島宇宙」は実在した。
カーンとウォルティエが、二大銀河の相対運動から局部銀河群の総質量を推定。ダークマターという語が一般化する前に、見えない質量を量っていた。
銀河面の星の密集に隠れていた「最寄りの隣人」を発見。天の川が今まさに隣人を食事中であることが明らかになる。
ファン・デル・マレルらがハッブル宇宙望遠鏡の7年間のデータからM31の横向き運動を初測定。約45億年後の正面衝突が「予言」から「確定事項」へ。
約20億個の星の位置と運動を測定。天の川が約100億年前にガイア・エンケラドゥスを飲み込んだ痕跡を発見し、銀河考古学の新時代を開く。
LSSTカメラが最初の画像を取得。10年間にわたる全天探査の幕開け。超淡矮小銀河の大量発見が期待される。
ルービン天文台の本格観測とすばるHSCの深部データが、毎週のように新しい矮小銀河候補を報告。局部銀河群の成員は「数百個規模」へ向けて増え続けている。あなたが生きている間に、名簿は何度も塗り替わる。
ほぼ確実に「いいえ」です。恒星どうしの平均距離は数光年もあり、星の直径に対して途方もなく広い。二つの銀河が重なっても、星々は互いにすり抜けます。衝突するのは主に星間ガスで、それが圧縮されて爆発的な星形成が起きます。
まずアンドロメダ銀河が年ごとに大きくなり、満月の数十倍の大きさで天を覆います。初回通過の頃には潮汐の尾が夜空を横切り、スターバーストによる新星・超新星が次々に現れます。合体後は、全天にわたる楕円銀河の淡い光の海の中にいることになります。
太陽系は合体の重力擾乱で、新銀河のずっと外縁部の軌道へ弾き飛ばされる可能性が高いとシミュレーションは示します。ただしその約50億年前後には太陽自体が赤色巨星へ進化し始めるため、「地球の無事」は別の意味で時間切れです。
確定した成員は80個以上ですが、正確な数は「今この瞬間も増えている」が答えです。超淡矮小銀河は満月の数万分の一の明るさしかなく、広視野探査(すばるHSC、DES、LSST)によって毎年新たな成員が見つかっています。
局部銀河群は「ローカル・シート」という銀河の薄い層の一部であり、それはおとめ座超銀河団、さらに巨大なラニアケア超銀河団へと連なります。その先では宇宙膨張(ハッブル流)が支配的になり、銀河団どうしは互いに遠ざかっています。
膨張は「空間全体の性質」ですが、局所的には重力がそれを上回れば構造は保たれます。局部銀河群の内部では重力が勝利しており、膨張の影響が現れ始めるのはゼロ速度面(約100万パーセク)の外側からです。私たちは、膨張する宇宙の中の「重力の島」に住んでいます。
本州からは事実上不可能です。大マゼラン雲は赤緯約−69°にあり、北緯35°の東京では理論上も地平線下に沈んだまま。沖縄本島以南で、南の地平線すれすれにかすかに昇る瞬間がある程度です。南半球(オーストラリア、チリ、ハワイの一部)では頭上高く、肉眼で明瞭に見えます。
銀河は「小さいものから先にでき、合体して大きくなる」(階層的構造形成)ためです。矮小銀河はその初期段階の「化石」。暗黒物質シミュレーションは天の川の周りに数百個の衛星ハローを予測し、観測がようやくそれに追いついてきました——かつての「欠落衛星問題」は、今や発見ラッシュへと反転しています。
主要30成員のデータ。列見出しをクリックすると並び替わります。◆ 天の川側 / ◆ アンドロメダ側 / ◆ 独立・未確定
| 名称 | タイプ | 距離(万光年) | 直径(光年) | サブグループ |
|---|
※ 距離・直径は近年の測定に基づく概数。dSph=矮小球状銀河、dE=矮小楕円銀河。天の川の距離は太陽系基準(0=所属)。